研究からわかっていること
思いやりは一つの能力ではなく、
- 安心できる人を信頼する力(愛着)
- 自分や相手の気持ちを理解する力
- 相手の立場を想像する力
- 実際に助ける・譲る・慰めるなどの行動
これらが長い時間をかけて積み重なって育つと考えられています。
0〜1歳頃
思いやりの土台は「安心感」
この時期は、相手の立場を理解することはまだ難しい時期です。
そのため、一番大切なのは「困ったら助けてもらえる」という安心感を学ぶことです。
※愛着に関する研究では、この安心感は、その後の共感性や社会性と関連することが繰り返し報告されています。
この時期にできること
✓ 泣いたらできるだけ応える
✓ 「悲しかったね」
✓ 「びっくりしたね」
✓ 「痛かったね」 など、気持ちを言葉にしてあげる
STEP2 1〜2歳頃
気持ちには名前があることを知る
思いやりは、まず自分の気持ちを知るところから始まります。
例えば「うれしい」「かなしい」「くやしい」「びっくりした」
など、毎日の出来事を言葉にしてあげましょう。
研究では、このような感情について話す親子の会話(Mental State Talk)は、子どもの感情理解や、その後の共感性・視点取得の発達と関連することが示されています。
今日からできること
✔ 絵本を読みながら
「くまさん泣いてるね。」「どうしたのかな?」と話しかける。「心について話す習慣」が大切です
STEP3 2〜3歳頃
少しずつ相手に目が向く
この頃になると、友達が泣いていると近寄る子もいます。
これは思いやりの芽生えです。
ただ、まだ本当の意味で相手の気持ちを理解しているわけではありません。
STEP4 3〜5歳頃
相手の立場を考え始める
この頃から、少しずつ「もし自分だったら」を考えられるようになります。
この能力を視点取得(Perspective Taking)と呼びます。
おすすめの関わり
絵本を読みながら「どうして泣いていたと思う?」「○○ちゃんはどんな気持ちだったかな?」「自分だったらどう思う?」
このような会話を増やしてみましょう。
STEP5 5〜6歳頃
思いやりを行動に移す
この頃になると
- 助ける
- 譲る
- 協力する
などの行動が増えてきます。
家庭でも、料理・掃除・お手伝いなど、「誰かの役に立つ経験」を積み重ねることが、向社会的行動につながると考えられています。
今日からできること
毎日全部やる必要はありません。
まずは、この3つだけで十分です。
✔ 子どもの気持ちを言葉にする
✔ 絵本を読みながら「どう思う?」と聞いてみる
✔ 「ありがとう」「助かったよ」を親自身がたくさん使う
子どもは、「言われたこと」より「見たこと」をよく学びます。
みかづきから伝えたいこと
思いやりは、「優しくしなさい。」という言葉だけでは育ちません。
安心できる毎日。
自分の気持ちを受け止めてもらえる経験。
そして、
思いやりのある大人の姿。
そんな小さな積み重ねが、
数年後、
困っている人に自然と手を差し伸べられる人へとつながっていきます。
参考文献・研究紹介
① Martins MC, Santos C, Fernandes M, Veríssimo M. Attachment and the Development of Prosocial Behavior in Children and Adolescents: A Systematic Review. Children. 2022.
研究デザイン
・システマティックレビュー(PRISMAに準拠)
・EBSCOデータベースから703本の論文を検索し、基準を満たした16本の査読付き研究を統合。対象は子どもから思春期まで
研究結果
・安定した愛着は、共感性(Empathy)と一貫した関連が認められた。
・愛着と「助ける・分ける・慰める」といった向社会的行動との関連は研究によって結果が一致しなかった。
・ただし、共感性が愛着と向社会的行動をつなぐ重要な役割(媒介)を果たすことが複数の研究で示された。
② Martins MC, et al. Attachment and the Development of Moral Emotions in Children and Adolescents: A Systematic Review. Children. 2021.
研究デザイン
・システマティックレビュー
・子ども・思春期を対象とした10本の査読付き研究を統合し、愛着と共感・罪悪感・思いやりなどの「道徳的感情」との関連を検討。
この研究でわかったこと
・安定した愛着は、共感や罪悪感などの発達と正の関連を示した。
・感情調整能力が、愛着と道徳的感情を結びつける重要な要因である可能性が示された。
